9月に入っても、まだまだ暑い日が続きます。日中の暑さに加えて、夏のあいだに溜まった疲れがじわりと出てくるのが、ちょうどこの頃です。朝晩は少しずつ秋の気配を感じても、体はまだ夏の疲れを引きずっているもの。「なんとなくだるい」「いつもより食が進まない」という方もいらっしゃるかもしれません。皆様、このところ食欲は落ちていませんか?
さて、食欲がないときというのは、「食べたくない」というよりも、「作る気になれない」ということのほうが多いのかもしれません。冷蔵庫を開け、何があるかを見て、献立を決める。元気なときには何でもないことが、疲れているとずいぶん重たく感じられるものです。夏の終わりに落ちているのは、食欲だけでなく、“献立を考える力”のほうなのかもしれません。
そんな日は、食パンを一枚取り出してみませんか。焼いて、何かをのせる。それだけでも、この「何をのせるか」で一枚のパンはずいぶん変わります。私たちが工房で惣菜パンを考えるときも、見るところはだいたい同じです。塩気があるか。コクがあるか。食感の変化があるか。この三つが揃うと、少しくらい意外な組み合わせでも、不思議と味がまとまります。塩気なら、ハム、チーズ、しらす、ツナ。コクなら、バター、マヨネーズ、オリーブオイル、卵。食感なら、きゅうり、玉ねぎ、のり、キャベツ。この三つの列から一つずつ選ぶだけでも、だいたい形になります。
たとえば、しらす+オリーブオイル+のり。ツナ+マヨネーズ+玉ねぎ。パンは先に軽く焼き、バターやマヨネーズなどのコクになるものを最初に塗ると、具材の水分を受け止めてくれます。のせるものは三つくらいまで。そのほうが味もまとまりやすいです。ついでに言うと、この三つを意識すると、栄養も自然と揃いやすくなります。ざっくり言えば、塩気になるものからたんぱく質、コクになるものから脂質、食感になるものから野菜や海藻。冷たい麺だけで済ませてしまうと不足しがちなものが、だいたい入ってきます。
そして、この三つを最初から持っている便利な食べものがカレーです。スパイスの効いた塩気、ルウのコク、具材の食感。ご飯にかけてが定番ではありますが、それこそ焼いた食パンをちぎって、温めたカレーにつけて食べるだけでも立派な一食になります。余裕があれば、カレーとチーズをのせて焼いてもおいしいですね。焼けたパンと温かいカレーの香りが台所に立ちのぼると、さっきまで食欲がなかったのに、お腹のほうが先に返事をしてくれることも?(笑)そう考えると、カレーパンが昔から人気なのも納得です。香ばしいパンに、コクのあるカレー、さらに衣のサクッとした食感。三つの条件がきれいに揃っています。
まだ暑さの残るこの9月。疲れている日ほど、決めることを少し減らしてみませんか?「今日はちょっと簡単にしよう」。たまには、そんな日があっても良いですよね?少しラクをして、それでもおいしく食べられたならそれで良し。この9月が、皆様にとって、食卓も気持ちも少し軽くなるひと月になりますように。
