想いを伝える日

朝晩の冷え込みが続いています。
それでも日向に立つと、どこか柔らかい光を感じて
「春はちゃんと近づいているんだな」とふと思います。

そんな2月にやってくるのがバレンタインデー。
街のチョコレート売り場も、少しずつにぎわい始めています。

とはいえ、移動販売でお伺いしていると
「今さらバレンタインなんてね」
「この年齢になると、もう関係ないわよ」
そんな声を聞くことも少なくありません。

確かに、若い頃のように誰かのために
ドキドキしながら準備をしたり、
特別な思いを込めて何かを渡したり。

そんな時間は、ずいぶん昔の話かもしれません。

「いまさらときめく相手なんていないわよ」
その気持ち、よくわかります。
でも少しだけ見方を変えてみると、
年齢を重ねたからこそ意味が出てくる日が、
バレンタインなのかなとも思うのです。

人との関係は、
長く続くほどだんだん「当たり前」になっていきます。
一緒にいること。
そばにいること。
支えてもらっていること。

本当はありがたいのに、
改めて言葉にする機会は少なくなっていきます。

そんな関係に、
一度深く息を吸い直すような時間をくれるのが、
バレンタインだと考えてみるのはどうでしょう。

もともとバレンタインは、
大切な人に「愛を伝える日」として知られてきました。
それが日本では、恋人同士だけでなく、
友だちへ、職場へ、義理や感謝を伝える日としても、
少しずつ広がっていきました。

いまでは「好き」という気持ちだけでなく
「ありがとう」
「お世話になっています」
そんな思いも、そっと形にできる日でもあります。

考えてみると「ありがとう」や「元気にしてる?」といった短い言葉ほど、
身近な人にはかえって照れくさくて言えないものですよね。

でもバレンタインという“理由”があると
「今日だから」「イベントだから」と、
ほんの少しだけ素直になれます。
この“少し”が、不思議と大きいのです。

心理学の話では、
人は「普段やらないこと」をされたとき、
自分が思っている以上に心が動くそうです。

何でもない日にふと渡された小さな贈り物や一言が、
あとになってじんわり思い出される。
そんな経験、きっとどなたにもあるのではないでしょうか。

だから大げさなことをする必要はありません。
ご主人に。
奥さんに。
離れて暮らすご家族に。
あるいは、いつも顔を合わせている身近な誰かに。
たとえば今顔を思い浮かべたその人。
そう、その人で良いのだと思います。
「これ、美味しそうだったから」
「たまにはね」
それくらいで、ちょうどいいのです。

特別なことをしなくても、
ちょっとした贈り物ひとつでその日の空気がふっとやわらぐ。
笑顔がひとつ増える。

そんな瞬間があるだけで、
いつもの日常は少し温かくなります。

もし、今年は何もせずに終わろうかなと思っていたのなら、
ほんの少しだけ、贈り物を探す気持ちで、
パン屋さんの車の中をのぞいてみませんか。

期間限定のブラウニーなども始まっています。
もらったら、ちょっと嬉しいもの。
関係を暖めてくれるもの。
そんな商品をいろいろ積んで巡回しています。

想いは、伝えなくなった瞬間になくなるわけではありません。
ただ、見えなくなるだけです。
バレンタインは、その想いをそっと表に出す日。
何歳になっても、誰かを思って何かを選ぶ時間、
そして渡すその瞬間は、やっぱりちょっと良いものです。

あなたのバレンタインが、穏やかであたたかな一日になりますように。

【ベンチタイム251号コラムより】