なかむらさんの独り言

【販売員の独り言】友

 -友-

高校時代のにがい思い出があった。
野球部に属していたが、補欠だった。
当然ながら野球をやっていた仲間たちとは技術的には差があったが、
3年間やめなかった。

皆に溶け込めず孤独な歩みだった。
なかなか友人もなく、今も反省している。
そんな私にも70歳にして友人ができた。

その新しい友は、「おにいさん」である。
彼は「弟よ」と家族なんだよとよく私に言っている。

80歳をこえ、歩く時もつえをたよりにする。
生活保護の彼に、正月には餅を持っていったら、
「おいしい」と妻と娘と食べたようだ。

先日はタケノコを煮て持っていったら、
「ありがとうね」と言ってくれたが
彼の妻はもう他界していた。

その日ドライブに連れて行ってくれと言い、
ヤビツ峠を越えて一時間ほど行くと、
ここで歩きたいと言われた。

昔よくここに来て川魚を釣ったらしい。
自然をこよなく愛し、
趣味生活といっては山から海、川を散策したようだ。

彼は「もう年なので、懐かしいこの場所だが、
あの世に持っていけるかな」とつぶやいた。

人生の輝いていた頃に誰も帰りたいのだと感じた。
しかし今、死後の世界を意識しながら、
肉体と闘い、過去にも戻れない
”老人”を友の中に感じ、
また私自身も70歳の老人なのだと思った。